Vol.84 Streets of VASIC
チャイニーズニューイヤー(春節)で賑やかな2月のニューヨーク。最近ではこの新年をテーマにしたアートフェアやマーケットイベントなどが開催され、街をあげてメジャーな季節行事となってきています。爆竹の破裂音と紙吹雪が舞う派手なお祝いムードは、お祭り好きなニューヨーカーの好みとリンクしているのかも? そんな賑やかな2週間が過ぎれば、バレンタインに。アメリカでは、女性がこぞってチョコレートを贈るということはなく、あくまで夫婦や恋人たちがロマンチックにディナーを楽しむ日。コマーシャルなお祝いなので、パートナーの有無に関わらず興味がないという人も多いです(笑)。ということで、今回はカップル事情を無視して、甘いデザートのお店を紹介いたします。
Hani's Bakery Cafe
イーストビレッジに昨秋誕生したアメリカンスタイルのペストリーショップ。ここは、有名レストラン「Gramercy Tavern」のパティシエと、フード雑誌「ボナペティ」のエディターというパワーカップルによるプロジェクト。セルビアとインドのバックグランドをもつ二人の手によって、今どきのアメリカンスタイルのお菓子のイメージが披露されています。
手のひらサイズのボリュームたっぷりのチョコレートクッキーは、バターとオーツ粉の香ばしさとチョコレートのハーモニーが魅力。外はサクッとしつつ、ねっちりとした食感が甘い物好きにはたまりません。ほかにも、レモンメレンゲパイ、チョコレートレイヤーケーキ、ドーナッツといったアメリカらしいデザートがありますが、ほどよい甘さと軽いテクスチャーのバランスが良く、コーヒーとともに美味しくいただけます。チェダーチーズとブロッコリーのスコーン、サンドイッチなどもあるので、朝や昼の軽食を目当てに訪れてもよさそう。
珠玉のミルフィーユを求めて
そして、レストランでいただくお気に入りのデザートも。「Wildair」は、ナチュールワインとクリエイティブな食事を一軒で、LES(ローワーイーストサイド)の中でも根強い人気を誇るお店。デザートとワインだけ、という使い方も実はOK。ここではミルフィーユがイチオシ。そのままでも美味しいクリスピーなパイをベースに、季節によって、チェリーxチーズケーキ、イチジクの葉xパッションフルーツ、バナナミルクxジャスミンティーなど、趣向を凝らしたフレーバーを提供しているのです。なお、コロナ禍に変わり種のドーナッツを店頭販売してバズを呼んだことでも知られ、ドーナッツは現在も土曜日の昼間のみテイクアウトで購入が可能です。
一方で、個性派デザートならイーストビレッジの「Smithereen」へ。ニューイングランド地方の食文化にインスピレーションをもとにモダンに再構築した料理が自慢で、是非ディナーから訪れて欲しいのですが、ここはデザートにも注目。特に、砂糖でパリパリにした海苔にリコリス風味のクリームを挟み、ミルフィーユに仕立てた一皿が衝撃的。コンセプチャルなプレゼンテーションに魅せられつつ、甘さの奥にじんわりと伝わる潮の香りが複雑で、舌と脳の理解が追いつかない(笑)。美味しい・まずいを超えたところにある”ユニークさ”に、「これぞニューヨークのおもしろさ」と愉快にさせてくれるのです。キッチンに面したカウンター席で、是非シェフの手元をみながら楽しんでみて。